今から二年前の私は鏡を見るたびに増えていく抜け毛に言いようのない恐怖を感じていました。最初は仕事のストレスや季節の変わり目のせいだろうと自分に言い聞かせて高価なスカルプケア用品を買い込み必死に頭皮をマッサージしていましたが状況は悪化する一方でついには排水溝が詰まるほどの抜け毛が毎日続くようになりました。さらに追い打ちをかけるように理由のない倦怠感や足のむくみ、そしてどれだけ寝ても取れない疲労感が私を襲いました。ただの過労だと思い込んでいた私はある朝シャワーを浴びた後に一束の髪が手の中に残ったのを見てようやく自分の身体に異常が起きていることを確信し震える手で病院の予約を取りました。皮膚科を受診したところ医師は私の頭皮の状態だけでなく顔の血色や手の震えなどを注意深く観察しすぐに血液検査を勧めました。数日後に出た結果は予想もしないものでした。私の抜け毛の原因は遺伝でもストレスでもなく甲状腺機能低下症という病気によるものだったのです。医師の説明によれば甲状腺ホルモンが不足することで全身の代謝が著しく低下し髪の毛を作る工場である毛細胞が活動を停止してしまっていたというのです。病名が判明したときはショックでしたが同時に原因がわかったことで少しだけ安堵したのを覚えています。それから専門の内科でホルモンを補充する治療が始まりました。薬を飲み始めて数ヶ月はすぐに髪が生えてくるわけではありませんでしたが徐々に身体の重だるさが消え朝の目覚めが良くなっていくのを実感しました。そして半年が過ぎた頃あんなに酷かった抜け毛がピタリと止まり生え際から力強い産毛が生えてきたのを見たときは涙が溢れました。この経験を通じて私が学んだのは抜け毛は単なる美容の問題ではなく身体の内部からの深刻な警告であるということです。もしあのまま病気に気づかずに自己流のケアだけで済ませていたら今頃私の健康状態はさらに取り返しのつかないことになっていたでしょう。髪は私たちの命と直結しているエネルギーの余り物であり内臓が悲鳴を上げているときには真っ先に切り捨てられる部分だという話を後で聞きました。今では体重も安定し髪のボリュームも全盛期に近い状態まで回復しましたが私はあの時の抜け毛を忘れないようにしています。それは私の身体が私を守ろうとして必死に出してくれたサインだったからです。もし今同じように異常な抜け毛に悩んでいる方がいるならどうか一人で抱え込まずに医療機関を頼ってください。その一本の抜け毛があなたの人生を救う大切なメッセージかもしれないのです。