鈴木さん(34歳)は、中堅の営業マンとして、常にトップクラスの成績を収めていた。しかし、その裏では、厳しいノルマと顧客からのプレッシャーという、重いストレスを常に背負っていた。彼の体に異変が現れ始めたのは、大きな契約を逃した直後のことだった。シャンプーの時に指に絡まる抜け毛の量が、明らかに増えたのだ。最初は気のせいだと思っていたが、数ヶ月後には、オフィスの蛍光灯の下で、頭頂部の地肌が透けて見えるのが自分でも分かるようになった。それからというもの、彼のパフォーマンスは徐々に落ちていった。顧客と話していても、相手の視線が自分の頭に向かっているような気がして、話に集中できない。自信のなさから、以前のような強気な交渉もできなくなった。鏡を見るたびに落ち込み、夜もよく眠れない。まさに、ストレスが薄毛を生み、薄毛が新たなストレスを生むという悪循環に陥っていた。そんな彼を見かねた妻が、ある日、一枚のジムのチラシをテーブルに置いた。「最近、運動不足でしょ。気分転換に行ってみたら?」。乗り気ではなかったが、妻の優しさに押され、鈴木さんは週末、近所のジムの門を叩いた。久しぶりに体を動かし、汗を流す。最初はきつかったが、トレーニングを終えた後の爽快感は、ここ数ヶ月忘れていた感覚だった。それから彼は、週に二回、仕事帰りにジムに通うことを日課にした。体を鍛えるうちに、少しずつ自分に自信が戻ってきた。そして、不思議なことに、あれほど悩んでいた抜け毛の量も、少しずつ落ち着いてきたのだ。運動が血行を促進したこともあるだろう。しかし、何より大きかったのは、仕事以外に夢中になれるものを見つけ、ストレスをうまく発散できるようになったことだった。髪が劇的に増えたわけではない。でも、鈴木さんの表情は、以前よりもずっと明るくなった。彼は気づいたのだ。薄毛と戦うということは、ただ髪を生やすことではない。ストレスに負けない、強くしなやかな心と体を取り戻すことなのだと。
ある営業マンがストレスによる薄毛を乗り越えた物語