AGA(男性型脱毛症)は、一度発症すると自然に治ることはなく、ゆっくりと、しかし確実に進行していくという共通の性質を持っています。しかし、その「進行速度」には、驚くほど大きな個人差が存在します。数年かけて徐々に薄くなっていく人もいれば、わずか1、2年で見た目が劇的に変化してしまう人もいます。この速度の違いは、一体どこから生まれるのでしょうか。その鍵を握る最も大きな要因が、「遺伝的素因」の強さです。AGAは、脱毛ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)が、毛根にある男性ホルモン受容体と結合することで進行します。この受容体の感受性の高さ、つまりDHTの影響をどれだけ受けやすいかという体質は、遺伝によって決まります。感受性が非常に高い遺伝子を受け継いでいる人は、同じ量のDHTが体内にある場合でも、毛根がより強く反応し、ヘアサイクルが急速に乱れてしまうため、AGAの進行速度も速くなる傾向があります。次に、体内でDHTを生成する酵素「5αリダクターゼ」の活性度の高さも、進行速度に影響します。この酵素の働きが活発な人ほど、より多くのDHTが生成されるため、薄毛が進行しやすくなります。これもまた、遺伝によって左右される要素です。これらの遺伝的な土台に加え、「生活習慣」も進行速度を左右する重要な変数となります。例えば、過度なストレス、睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、喫煙といった不摂生な生活は、頭皮の血行を悪化させ、髪の成長に必要な栄養供給を妨げます。これは、いわばAGAの進行に追い打ちをかける行為であり、遺伝的なリスクがそれほど高くない人でも、不摂生が続くことで進行速度が加速してしまうことがあります。このように、AGAの進行速度は、生まれ持った遺伝的リスクという「基本速度」に、日々の生活習慣という「アクセル」が加わることで決定されるのです。自分の進行速度が速いと感じる場合は、それだけ早期の対策が重要になるというサインと捉えるべきでしょう。